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第213話 帰るにはまだ早い

مؤلف: 花柳響
last update تاريخ النشر: 2026-09-19 06:00:58

「名前を出さないんですね」

「今は出しません。出すことで相手に閉じる理由を与える場合があります」

 閉じる理由。

 その言葉は、受付のアクリル板より冷たく感じた。こちらが一つ間違えれば、葵さんを記録の奥へ隠す口実にされる。私はバッグの持ち手を握り直した。

 車が信号で止まり、前方のブレーキランプが窓に赤く映った。

 私は面会申入書の一枚目を見直した。

「会わせてください、とは言わない方がいいですか」

「言っても構いません。ただ、相手は医療機関です。感情に応じて面会を認めることはできません」

「感情だけでは通りませんよね」

「でも、本人の意思を確認してください、とは言えます」

 私は顔を上げた。

 高瀬さんは、そこで初めてわずかに表情を和らげた。

「そこが大事です。誰かが会わせないと言ってるのか。本人が望まないのか。医療上、本当に会えないのか。……全部、別の話です」

 律は、隣で黙って聞いていた。

 車椅子には座って
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